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Thursday, February 28, 2013

Open Education and Cultural Imperialism (オープンエデュケーションと文化帝国主義?)


*English follows Japanese


先日ビックリしたこちらのニュース↓


誰でも無料で履修 東大、オンライン講座を9月開講


東京大学がアメリカの代表的なMassive Open Online Courses (MOOCs)プラットフォームであるCourseraに日本で初めて参加することを発表しました。

タイミングがばっちりだった先日のワークショップでも、少しお話が聞けてよかったです。

この動きに関連して、すこし考えてみたのは、「オープンエデュケーションと文化帝国主義」 についてです。
 文化帝国主義 (Cultural Imperialism) という言葉はしばしば非難的に用いられますが、私が用いている範囲においては、一国の文化がその他の国の文化に侵食していくといった簡単な意味で捉えて頂ければいいかと思います。


偶然見つけた、Hong Kong Shue Yan Universityという大学のAssociate Academic Vice PresidentであるAndrea Hope (2005) の以下のような文を見たのがこれを考えたキッカケです。

"Cultural imperialism as exemplified by the use of English rather than the national language; a standardized curriculum rather than a culturally embedded syllabus; and norms of degree architecture rather than a local model."

HopeはこれをDisadvantages of Transnational Educationの一つとして記しています。
要するに、例えばアフリカの子供がアメリカからの遠隔教育を受ける際に、アフリカの言語を用いずに英語で教育したり、アフリカの教育文化の中で使われてきたシラバスのようなものを使わずアメリカのものを適用したり、学位などのシステムもアメリカのものが入ってくる、といったところでしょうか(degree architectureの訳があまりわからず、不確かですが。。。><)。


この文は8年ほど前に書かれたものですが、私はこの文化帝国主義の観点から
現在注目されているオープンエデュケーションを捉えてみると面白いのではないかと思いました。

つまり、MOOCsに代表的なオープンエデュケーションにおいて、仮に、主にアメリカを発信源とするアメリカの教育文化がその他世界へ普及・侵食している、と捉えてみると面白い考察ができるのでは、ということです。

私もいくつかの授業を受講していますが、例えばCourseraのコースは全て英語で提供されていて、シラバスなどは、おそらくアメリカの教育を基に作られているはずです。

しかしここで、MOOCsをそのように捉える際に、興味深い点が二点あります。

①10年ほど前と比べ、英語がグローバルな言語だという感覚が強くなっているということ
②東大など世界各国の国がMOOCsに参加し始めていること


①についてですが、
近年、楽天などが社内公用語を英語にしたことなどに見られるように、世界全体で国際的な取引や移動が増えていると思います。そうした中で英語は世界中どこでも使われるようになってきています。
これがHopeの文が書かれた8年ほど前とはだいぶ状況が違うのではないかということです。

もはや英語で教育を提供することは、「欧米文化」の伝達などではなく、当たり前のこととして捉えるべきでしょう。
日本にいるとその感覚を掴みづらいかもしれませんが、お隣の韓国やその他アジア地域の事情を考えれば納得できるかと思います。

なので、英語を文化帝国主義の表れとして論ずるのは不適切だと感じました。


②については、
この記事の冒頭にも書きましたが、東大を含めアジア、イギリスなどアメリカ以外の地域から
CourseraなどのMOOCsのプラットフォームを使って、教育を提供する大学が増えてきたということです。
このプラットフォームというのがミソで、Courseraはアメリカの大学のみを受け入れるのではなく、世界各国の教育機関の講義を提供するプラットフォームとして機能しています。

すなわち、東大などアメリカ以外の国が自国で行ってきた教育をMOOCsを通じて世界へ発信できるので(もちろんMOOCs用に構成し直すでしょうが)、その意味では「文化帝国主義」の「文化」が一国のものではなく、バラバラ、もしくは複数の文化のミックス状態になっていると思います。

ここで「複数」といったのは、例えば東大がCoursera上で宇宙物理学の授業を開講する際、シラバスは日本の大学で主に使われるようなものにするでしょうか、それともアメリカのものに近いものにするでしょうか。もし後者なら、アメリカの教育プラットフォームで、アメリカ型のシラバス形式で、日本の大学が授業を行う、といった、面白いことになります。
もはや文化といって何を指すのか、ということがあいまいになり、ただ一国の文化が他の国や文化に一方向に伝わるようなものではありませんね。

以前はdisadvantageとして懸念されていた教育における文化帝国主義が、今は複雑なものになり、もはや意味をなしているのかさえわからなくなっています。


今まさに、MOOCsを通して、文化帝国主義という概念自体がもう時代遅れだということを私たちが思い知らされているのかもしれません。


Monday, February 25, 2013

オープンエデュケーションに関するワークショップに参加してきました


2月24日に、以前からお世話になっている東京大学の重田先生らが主催された
オープンエデュケーション・ワークショップ「オープンな教育を創って学ぼう!」 に参加してきました!


どういった内容のものだったかというと、その概要がこちら↓(重田先生のブログから引用)

近年、欧米諸国を中心にオープンエデュケーションと呼ばれる活動が活発になっています。大学をはじめとする様々な教育機関や個人が、インターネット上に教 育用途に自由に使えるオープン教材(OER:Open Educational Resources)を公開し、大学はオープンコースウェアをはじめとする大学教育に使われる教材を無償公開しています。最近では MOOCs(Massive Open Online Courses)と呼ばれる、教育ベンチャー企業や大学が百万人規模でオンライン教育を行う取り組みが急速に広がっています。

このようなオープンエデュケーションの活動とは、いったいどのようなものなのでしょうか。なぜ、ここまで活動が急激に広がってきたのでしょうか。この活動 は、誰が、どのような方法で、どのような支えを受けて進められているのでしょうか。オープンエデュケーションは、既存の教育を変えうるものなのでしょう か。「オープンエデュケーション・ワークショップ」では、このようなオープンエデュケーションに関する問いや疑問、可能性と課題について、主催者と参加者 が共に考えます。

「オープンエデュケーション・ワークショップ」は二部構成となっています。

第一部では、オープンエデュケーションに関する「基礎知識」を整理します。オープンエデュケーションの活動について、さまざまな事例をもとに質疑応答を交 えながら解説します。ここではまず、オープンエデュケーションとは何なのか、未来の教育に対してどのような可能性や課題を持っているのかについて、参加者 の方々の知識を整理して頂きます。

第二部では、オープンエデュケーションを「創ることで学ぶ」活動を行います。「デザイン思考」の方法をベースにしたグループワークによって、オープンエ デュケーションを利用する学習者の探究ストーリーをつくり、様々なサービスを考案しながら学習者の学びの環境をデザインします。オープンエデュケーション の活動を「提供する側」「利用する側」の両面から考え、実際の学習シーンにあてはめてみることで、オープンエデュケーションの持つ可能性や限界について、 理解をより深めて頂きます。

 


要するに、既に知っている人も、知らない人も、近年注目を集めている「オープンエデュケーション」について重田先生のお話を聞きながら整理し、その後、その知識を使って楽しいアクティビティをしよう!という構成ですね。


実際に行くと、参加者の方々は大学関係者から企業の方々、大学院生など年齢層も様々でした。学部生は私を含め2、3人だったような気がします(もっと学部生も増えてほしい。。。)

第一部では重田先生がわかりやすくオープンエデュケーションの「今」を解説してくださいました。
途中で使われていたビデオがとても印象的でした。 それがコレ↓


つまり、新しいテクノロジーによって、教育のかたちやありかたが将来大きく変わることが予想されるわけです。(トントン拍子でいくかどうかは別の話ですが。。。)
私にとっては、知識の整理のような話でしたが、全く知らない参加者の方にとっては色々驚く内容が含まれたお話だったのではないでしょうか。

重田先生のお話のまとめもありますのでぜひ。
スライドも共有してくださっています。

やっぱり私が先生のお話の中で気になったのが、「ニーズ」という背景が後押ししてオープンエデュケーションが動いているということですね。

例えば、
「2020年までに67%の職業で学部卒の経歴が必要」というお話がありました。
アメリカの大学では「non-traditionalな学生」 、つまり働きながら勉強をしている、などの「普通の」学生とは異なるタイプの学生が全体の75%を占めるらしいです。
(ところで、学部卒以上じゃなきゃ出来ない職業って、なんでしょうか。。。)
そして彼らはドロップアウト(退学)率も高いので、そこに、はっきりとした「勉強を続けたいのに大学に通えない」というニーズがあるわけです。
ここでインターネットを介したオープンエデュケーションが使われうるということですね。

また、途上国や新興国では学生の数が将来多くなり、大学自体の数が足りなくなるという事態もおこっています。

このような「ニーズ」があるような背景の国では、なるほどオープンエデュケーションも盛り上がるわけです。

そんな中、日本では、どうでしょうか。
大学全入時代と言われ、大学に入学しても単位をとることが目的になってしまい、卒業は単位さえとればできるような状態ともいえます。
また、少子化と言われているのにも関わらず、大学の数はどんどん増えてきています。

そこで、無料で大学の講義を受けることに対する「ニーズ」はあるのでしょうか。
上に書いた海外におけるニーズに対して、日本でも確かに、地方に留まり、第一志望の学校に通うことのできない学生や、中退者は予想以上に多いです。
でもそれらの実状が可視化されていないということもあって、社会的に彼らをサポートする動きは少ないですよね。つまり、「ニーズ」は浮かび上がっていない。

もっとも、その一方で、「この授業を受ける必要がある/受けたい」 というような思いが今の日本の学生の状況からは生まれていないのではという、「学びに対する意欲」の問題もあると思いますが。

MITのOCWは多くの学生が利用しているそうですが、日本の大学のOCWは果たしてどのくらい学生に利用されているのか。。。 う~ん。


もちろんオープンエデュケーションの利用方法や目的は様々ですが、はっきりとした「ニーズ」はこれだ!と言えるようなものがまだ見当たらない(?)日本においては、まだまだ今後試行錯誤が必要といえるのではないでしょうか。




さて
第二部では、関学の武田先生と阪大の森先生主導でグループワークを行いました。
グループごとに仮想の人物「ペルソナ」を創り、その人物がオープンエデュケーションとどう関わっていくかを考えるアクティビティです。
私のグループは学生が一人だったということもあり、私のストーリーをもとにした「ペルソナ」ができました(笑)
このような体験型の活動を通してオープンエデュケーションを捉えるのは新鮮で、とても楽しめました。



懇親会には、京都大学の飯吉先生の授業を受講して興味をもち、はるばるバスで来たという京大生もいて、私自身刺激を受けたと同時に、同じ世代の学生にももっと広めていけたらいいなと改めて感じました。